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肩の凝らない、気軽に観られるお芝居で、こんな舞台もいいなと感じさせる公演
演劇集団浜松キッド『お仕事じゃない!』

2004/12/14(日)  クリエート浜松






■演劇集団浜松キッド「お仕事じゃない!」観劇感想(平井様)
 小説青山の編集室で、明日の朝までに印刷工場へ入稿しなければならない原稿全てを紛失したばかりに、大騒ぎ、その上廃刊の危機までせまり、せっぱ詰まって紛失した小説の原稿を自分たちででっち上げようとする編集長始め編集部員達の奮闘記というお話で、旗揚げ以来喜劇中心に上演してきたキッドらしい手慣れた舞台だった。
 少しテンポがゆっくり目であると感じたが、これもキッド独特のスタイルであろう。その分ゆったりと役者の演技を楽しむことが出来たし、妙な緊張感を強いられることもなかった。
 ただこのことが、決めるべき所で決めきらなかったり、せっかく起きた笑いが積み重なっていかず抱腹絶叫とは行かなかった原因だったかも知れないが、それよりも各役者が伸び伸びと楽しく且つ思い切って演じているのが観ていて心地よかった。このことは、演出の山田利明の各役者への温かい目配りと、型に嵌めない役者の長所を生かそうとする演出姿勢に起因するものだろう。

 役者は、編集長役の大石英喜が滑舌が少し気になったが存在感のある演技を披露していた(少し目線の低さも気になったがこれは観劇した位置−客席中段−によるものだろう)。岡本真規子は本質を隠し冷徹なキャリアウーマンを演じているデスク役を見事にこなしていた。編集員の田中役の島津敬の、こんな調子の良い若手、居る居ると思わせる演技も良かった。彼女が原稿を紛失したのがそもそもの始まりのちょっと抜けた編集部員の西園寺麗華役の大河原佳美も面白かったが、少し暗いように感じた。新米アルバイトの牧村瑞穂を演じた澤木千果の素直な演技も良かった。
 大道具(担当:白柳弘幸、袴田光春、舛田雄介、畑木宏支)は、余り広くない舞台の上手に応接室、メインに編集室をうまく設置し、舞台の狭さを感じさせなかった。また各大道具の処置が丁寧で劇団の歴史の長さを感じさせた。
 肩の凝らない、気軽に観られるお芝居で、こんな舞台もいいなと感じさせる公演だった。


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