60年の伝統の重みと確かさが舞台に活きていた
浜松放送劇団『藁科川』
2006/11/5(日) 浜松市福祉交流センター
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■演劇を通し第二の人生も力強く生きていくメッセージを発信してください (加藤様)
演劇フェスティバルで浜松放送劇団の「藁科川」(作・演出 村越一哲)が上演された。
「藁科川」は平成2年春の設定だが熟年離婚や親子の世代間のギャップなど、今も模索されている課題がテーマとなっている。故郷の藁科川のそばで定年退職し第二の人生を歩き始めた修一とその家族の物語である。
観客の大半は修一と同世代であった。私も50代となりこれからの人生の指針やヒントを見つけられるのではと期持を持って開幕を待った。
離婚を告げて家を出た妻が亡なくなり、舞台は四十九日の法要が終わった午後の居間。
結婚して親になった子供たちから「お父さんは仕事ばかりで家にいなかった、お母さんは大変だった」と責められる。
修一は「明治生まれの厳格な父に育てられた」とか「家族のため仕事に励んできた」と主張する。しかし、子供を抱きしめてやれる時期は春のように短く、過ぎた日々は帰らない。
「自分のやってきたことはまちがっていたのか。」妻と子供のため身を粉にして働いてきてのに、、、、。修一に自分を重ねて見ていた人もいたのではないだろうか。
また、弟には「妻には愛していると口に出していわなければわからない」と言われるがそんなことはできなかったといって笑う。修一をみているなぜかともどかしい。
彼のように口下手で仕事優先主義の男性は、退職したとたん妻に出て行かれて男やもめのわびしい生活になるかもしれないということか。それなら、どうしたら最悪の事態を免れることができるだろうか。
藁科川は河口で安倍川と合流し太平洋に流れている。人生も川の流れのように時代の波に流されていく。修一は藁科川のほとりで何を思っただろう。
私は「藁科川」を観て、子供は親を責めるだけでなく親がなしえなかったものを自分の人生に生かしていくことも大切だと思った。そして、人も川のように寄り
添いひとつとなって流れていくのが自然の姿なら肩の力を抜き添うて生きる道も美しいと思った。
戦後の日本はとても貧しかった。若者たちは高校卒業後すぐ就職して資格や技術は働きながら身につけた。あの頃は生きることは働くことと同義語でもあった。
来春、高度成長時代を走り続けてきた団塊世代の人々が退職する。彼らの歴史も戦争体験と同じように語り継いでいくべき貴重なものである。
「藁科川」は平成五年に初公演された作品で、今回は浜松放送劇団の創立六十周年記念公演として上演された。村越さんの「藁科川」に対する想いの大きさが伝わってくる。
村越さん、団塊世代とそれに続く私たちのために「新しい藁科川」書き下ろしてください。
そして、演劇を通し第二の人生も力強く生きていくメッセージを発信してください。 |
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■イプセン作「人形の家」を思い出させた芝居であった(本間様)
結成60周年を迎えた浜松放送劇団。60年の伝統の重みと確かさが舞台に活きていた。何と言っても村越一哲の脚本が良かった。時代に合った熟年離婚が話題になっているだけに、話に現実味があった。1時間10分の上演時間に上手くまとめられていた。
井上修一役の古賀昭隆と妻役の古賀千春は、豊富な舞台経験者だけあって、その演技は安心して見ていられた。長女役の山下春子の演技も光った。日常の何気ない会話が飾り気無く出ていた。次女の鈴木和子と長男の伏見隆典は、熱演ではあったが感情の起伏にもう一工夫欲しかった。子役が舞台に出ると明るくなる。今回も子役の存在は大きかった。
舞台美術(石黒實)のリビングが、現代風に洋間と日本間が一緒になっていたのは成功だった。欲を言えば、壁面に演劇や写真の一枚が欲しかった。日本障子が洋間にもあったが、多少不自然さを感じた。最後の場面で蛍が出たが、一工夫して飛ばせて見せて欲しかった。ファックス付きの電話も、現代を感じる小道具
としてうまく使われていた。
日比野智香と安藤徳彦によるバイオリンとピアノの生演奏は、苦悩する修一や修一を心配する長女等、場面に良く合っていて効果があった。
日本経済を支え、戦後の日本を今日まで復興させたのは修一の世代の人達である。男性が十分社会に出て働けるのは、女性達の陰の支えが大きい。家族、家庭を顧みず、ただひたすら会社のため、ひいては日本の復興のために働いてきた彼等。定年を迎えふと振り返ると、そこには家族と自分との間に大きな溝ができて
いた。家族というより妻との間にというべきであろう。
大方の男の生き甲斐は仕事にあった。昇進に夢を抱き、その先には家族、家庭の安泰を求めたのは確かである。子供に最高学府の教育を受けさせ、良い人と結婚をさせる。電化製品等物質的豊かさを妻に与えた。住宅ローンを払い終え、これが家族への愛だと思っていた。妻の支えには、口にこそ出さないが心の中では感謝していた。だが、現実には男が考えるほど甘くはなかった。男は妻が離婚を口にするまで、満足はしていないものの不平はないと思っている。離婚届を前にして、退職金の半分を妻の口座に移して欲しいと言われた時、男は驚きあわてやがて厳しい現実を知る。イプセン作「人形の家」を思い出させた芝居であった。
こうした世相を上手く取り入れたこの芝居は、この劇団の60周年記念公演にふさわしい内容だったと思う。 |
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■アンケートより
○現在あり得る夫婦間などの人間関係や、人物描写がされていて、わかりやすくおもしろかったです。
○戦争を境に価値観が少しずつずれて現在に至り、豊かすぎる時に育った人々の、これからの生き方に不安が感じられました。
○村越先生の演劇に寄せる情熱に、感動します
○金原明善に続き、2回目の観劇となりました。今の世の中を象徴するような内容で、とても感動いたしました
○熟年離婚の件は、テレビ等々でも取り上げている意図角社会問題ですが、地元劇団で敢えて上演をされたことに意義があります。今日的課題は、なかなかに演出が大変かと思います。ますますのご研鑽をいのってみます
○伏見さん、お疲れ様でした。今まで見た中で一番よかったです。父親との喧嘩シーンが迫力あって、特に良かったです。心打たれる劇でした。
○自分の父親のことを思いだしました。もう亡くなりましたが、父親もそういう気持ちだったのかなと、思いました
○10年も前の脚本とのことだけど、今でもよくおこりやすく、TVドラマにも取り上げられる素材。登場人物の、叫ぶような発声が気にかかった。現実の素材だけれど、何か救いが欲しい。世代を超えた話の中で消化されていくものだろうか。やはりお互い理解しあえる会話が必要だと思った。
○大変良くできていて良かったと思います。小さいお子さんも、もう少し堂々としていたら……
○大変良い。来年も楽しみにしております
○良かった
○素晴らしかった。感動しました。「普通に生きて死ぬ」と言うことの難しさと幸せが、良く感じられた作品だと思いました。
○夫妻どちらの気持ちも分かるような気がし、とても難しい本題だと思いました。蛍の場面きれいでした
○浜松放送劇団60周年記念講演ということで、拝見させていただきました。ありがとうございました。村越先生、ぜひお元気でご活躍下さい
○今まで自分が歩んできた行動について、反省させられました。これから家族に思いやりをもって過ごしていきたいと思います。
○どこにでもあるような夫婦の感情のやりとりなんだろうな、と思いながら見ていました。身近なテーマで、観やすかったです。蛍をみんなで見ている場面、とてもきれいでした。
○私たちの時代と同じだったので、大変見栄えがした。また来年ぜひよろしくお願いします。
○大変感激しました
○テーマが今に通じるもの(自分の関係ある世代の登場人物厚生)なので、興味深く見せていただきました。今の親と子(子、青年、子ども)は、お客さんも呼べるので、ぜひお願いします
○身近にあることをよくまとめ上げ、涙が出てきました。ありがとうございます。
○お父さん役のかたが、とても上手でした。あと、子役がうまくて、びっくりしました
○子どもたも頑張って公演し、楽しい練習風景が想像できました。舞台も奥行きが感じられ、本当に川があるように思えました
○現実味のある内容で、考えさせられる部分があり良かったです。
○大変良かったです
○ただ一言、良かったです
○どこにもありがちな問題で、身近にかんじました。家族のありかたについて、皆が考え直す時期にきていると思います
○知り合いが出演していたのですが、前回より上手になっていて、感心しました。私も、(他の家と比較して)夫不在の家庭をささえて過ごしてきたと思っていますが、やはり時折けんかをしてでも話し合って、心の中を見せ合ったほうがいいかな、って反省しました。
○同じような年令となり、自分の生き方を見つめ直す良い時間をいただきました。幸せも不幸も背中合わせ、終わってみれば幸せなときが多かったと思える人生でありたいと思いました。今も後悔することなく、人とのコミュニケーションを大切にしたいと思いました。来させていただいて良かったです
○良かったと思います
○なかなかおもしろかった。1つの局面からとらえるだけなく、いろんなとらえ方があるのが、興味深かった。
○今までの浜松劇団の公演の中で、一番分かりやすかった
○戦後の変遷、家族制度、家族愛等、大変考えさせられることの多い良い芝居でした。ありがとうございました。
○第3場、修一、春男のしっとり場面、再変、共感、良子の家出、春雷、いまいち迫力に欠けたかな?生意気言ってすみません。
○藁科川って、実在するのかなぁ−と、思いながら観ていました。こんな家族はありそうです。
○60周年、おめでとうございます
○演劇は良かったです
○得たもの(社会的地位や財産など)と失われた物(夫婦の絆、親子の信頼関係)をバランスシートに記載すると、人生の総決算はプラスが残るか?マイナスが残るのか?
○家庭の主婦が、家族のためにと我慢して、自分のやりたいことを離婚してまで館ゲルということ、男性は男性で自分の通って来る間違いはなく、あくまでも正しいことだと思っています。そのまま良く表現していると思います。また、環境問題、介護問題も取り入れ、離婚後の生活費(年金分割など)社会問題と、充分考えていると思います。なお、山下さんの場内に渡る声量、歯切れの良さには何度も感服致しました。
○水清く、鮎飛び交う緑の藁科川のほとりに、5年住んでいました。演題の、「藁科川」にひかれて、観劇しました。熱演ありがとうございました。
○今、開演15分前。初めて浜松放送劇団の公演に参加しましたが、意外に思ったほど観客が少なくてビックリしました。もっと観客が多いと思っていましたが……。放送劇団の公演は初めてですが、私はいろんな劇団と音楽会で携帯電話のマナーの悪さに、さんざんな思いをしておりますので、携帯が劇をぶち壊すことのない事を、願っています。とても始まるのをワクワクしています。休憩中、悪い予感が大当たり、開演前のアナウンスで携帯電話について一言も注意がなかったので(!?)……。始まってまもなく、しっかりと着信メロディーが鳴り響いて、アーアー、観客の子どもの泣き声や騒ぎ声はまあまあ何とか我慢できるけど、メール音も少々うるさかったです。劇の方は内容はとてもよかったのですが、私の感想個人的に言わせてもらえれば、子役の子どもたちはごく自然だった気がしますが、夫婦役の子どもたち娘や息子の役者さんたちが、なんか力が入りすぎて力みすぎて、どうもしっくりこなくてあまり自然な感じがしなくて硬い印象でした。でも、よい印象はありました。またぜひ、次も楽しみにしていますので、がんばって下さい。
○なかなか答えの見つからない問題ですが、いつも当たり前のように男性側の思いやりのなさ(言葉の足りなさからくる日本男性特有のもの)が描かれ、我慢した女性の後悔やら虚しさが語られますが、一般に女性も、もちろん男性も会話が下手なのだと思います。自分も含め、客観視していて強く思うのは、伝えたいことの10分の1も言えないうちに、双方が自分を認めて欲しい、自分を理解してほしい、の感情が前に出て会話として成立できず、互いに思いがあるのに独りになって、結局もっと佗しい老後になってしまう夫婦が多いと思います。会話のできる男女教育になるような舞台も観せていただきたいと思いました。
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