劇評
「花の紅天狗」演劇集団浜松キッドゴージャス
2005年10月23日(日)  クリエート浜松
松本『パッションのゆくえ』
  舞台の幕開けはさっそうと月影花の丞演じる紅天狗の チャンバラ活劇から始まった。この芝居って時代劇と思って いると、まもなくそれが劇中劇であることがわかる。 こうして、幻の舞台紅天狗の上演権をめぐり、剣と剣との 時代活劇ならぬ台詞と台詞を切り結ぶ舞台活劇といった 物語が始まる。

 歌あり、ダンスあり、殺陣ありの2時間半、幾つものの 劇中劇とダメだしが笑いを誘う。月影花乃丞の「芝居は パッションよ」の言霊にあやつられるように、桜小町かける、 赤巻紙茜、仰天一郎、上川端麗子、藪雨史郎のパッションが ぶつかりあい、謎と秘密が入り乱れ、解き明かされる。

 正直、歌もダンスも殺陣もおせじにもうまいとはいえない、 でも、そのパッションは感じる。キッドはやったんだ。 「劇団☆新感線」に挑戦したんだ。

 芝居が終わり、観客が「おもしろかったね」と言ってホール から出てくる。そして、ロビーに役者と観客が抱き合って喜びあう 光景が溢れた。

 紅天狗の台本は真っ白だった。何も書かれていない舞台に パッションで自由に即興芝居を生み出すのが紅天狗なら、 このロビーに劇団員一人一人のパッションのゆくえがある。 「今から、舞台で出演者と観客で記念写真を撮ります。」と アナウンスが流れた。こんな幸せな時間てあるだろうか。

 月影花乃丞は言った「全ての道は、舞台に通ず」と、ならば、 舞台の道は全てにも通じているはず。この芝居をやり終えた今、 キッドの道はどこに通じるのだろう。

 歌わなくても、踊らなくても、殺陣がなくても、パッションの 行方を知りたくて、次も、ぼくはキッドの芝居を観に行きます。