劇評
「ピアニャン」劇団からっかぜ
2005年11月12日(土)  浜松市福祉交流センター
本間
 1時間20分の短い時間だつたが、歌あり踊りあり演劇ありの楽しいミュージカルは、更にその時間を短く感じさせていた。
 音楽に合わせ踊る事が大好きで、何不自由なく暮らしていた一匹の仔猫。主人の転勤に伴い福岡から東京へ。マンションでは、ピアノを弾いたり猫を飼うことは許されていない。一家の窮状を察し野良猫となる。田舎育ちの仔猫一匹、都会で暮らす苦労。それでも大ボスや仲間に助けられ、主人一家に戻っていく。

 楽しく心温まるミュージカルだが単純に楽しめない。東南アジアやモンゴル、東ヨーロッパの国々では、いまでも路上で暮らすストリート・チルドレンを思い出した。苛酷な環境の中で細々と生活をしている。彼らには、将来の希望や生活設計の展開すら期待できない。この彼らに、幸せな日々が何時来るのだろうかと、深く考えさせられた。

 子供向けのミュージカルだが、大人も充分楽しめる。庶民のささやかな幸せが、杜会の不条理で崩れていく現実を、楽しさの中から発見できた。黒猫(タップ)「古木大祐」のタップは若さがあり、太猫「中村真紀子」はベテランらしく、持ち味を充分出していた。「坂田真生」は、事務員、子守役募集女、司会者の3役を演じ分けていたのは流石であった。

 演出「布施佑一郎」は、テンポが良く、その上で丁寧な演出に好感が持てた。欲を言えぱ、それほど広くない舞台を一杯に使って欲しかった。音楽「加藤正祐」も、演出に合わせた軽妙なテンポは、ミュージカルを盛り上げていた。舞台装置「布施佑一郎」は、バックに高層ビルを描き、中央には小型の回り舞台を設け、場面転換をスムーズに行っていたのは特筆すべきである。

 ダンス「加藤正裕」が一部に不揃いが見られたが、台詞のトチリと一緒にご愛嬌と言うべきであろう。劇団四季の「キャッツ」を想像しながら、猫の衣装「森幡洋子」メイク「桝田依里」は、もう少し自己主張をしても良いのではと思った。夜の帳が下りた街中を、心温まる思いで帰路についた。
●アンケートより
23歳女性
とても面白く観させて頂きました.。「野良」なので、最初は辛い話になるかと思いましたが、強い気持ちをもち続けていればこんなに明るく楽しく生きれるものなんだなと、感動しました。ピアニャンの状況は昨今の若い人のものと似ていて、生きがいや夢が持てない人達に、是非観て欲しいなと思います。お疲れ様でした。

24歳女性
どんな人間でも楽しめるストーリーで、あっという間の一時間半でした。音楽が全て手作りというので、とても新鮮でした。

55歳女性
踊りあり、歌あり、そして劇、ちょっと人間社会を風刺したような感じで面白かったです。ありがとう。

33歳女性
楽しかったです。子供たちも、お話の中に引き込まれていました(身を乗り出して観ていました。)私も観ていて元気が出てきました.。ありがとうございました.。

11歳女性
すごく楽しくみれた。ゆかいだった。ピアニャンはとてもたいへんだったけれど、最後はみんな幸せになれて良かったと思います。

62歳男性
今回は多くの子供さんがお父さんお母さん又家族と見えており内容もわかり易く楽しんだことでしょう。現代の大人社会とダブって見ていました.。今後も劇団員みなさんのご活躍をお祈りいたします。